感じる心・・・

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2004年 11月 23日

ゆきの小舎

旅の続きです。

○月○日
昔、南米のチリ沖の地震による津波の被害で、多くの人が死んだと言う。この海猫の港町を覆うバカ高い堤防は、その被害を防ぐためのものらしい。
俺は古代中国や中世ヨーロッパの城塞都市に思いを馳せた。ここは陰影の街だ。
谷崎のように礼賛できない俺は、野宿を諦め民宿に泊まることにした。
宿も貧相なら、食事も貧弱だ。その貧しい夕食の旨かったこと。地魚の煮付けと漬物だけなのに、物凄いご馳走だ。
土地のものを土地の人が作ると、こうも旨いものか。野宿の自炊もいいが、予算の許す限り、こうゆう宿に泊まろうと思った。

○月○日
八幡平の雄大な山並みを越えて、秋田側に下った所で小さな看板が目に付いた。旅の宿「ゆきの小舎」だ。
日光であった自転車君のお勧めの宿だった気がする。で、泊まることにした。
玄関を入るといきなり、酒を注がれた。宿と云っても3DKのマンション程度の間取りしかなく、玄関を入るとフロント兼、居間兼、客室の部屋らしい。俺に酒を注いだ男は、現職警官で、ここの常連客と名乗った。注がれるままに酔い、話は俺にこの宿を教えた人間に及んだ。
名は尋ねなかったと答えると、アルバムが引っ張り出され、この中から捜せという。
ページを捲って驚いた。そこには、歩きで、リヤカーで、自転車で、日本一周中の老若男女が溢れていたからだ。そういった連中の関所のような役割を果たしているらしい。
”俺はおまえらみたいな莫迦な奴の話を聞くのが大好きなんだ。だから、休暇がとれるとこんな田舎まで、やって来る。今回は今日が最終日で一匹も釣れなかったとガッカリしたところにおまえだ。がはは、まあ飲め飲め”
日記を書く時間もくれないらしい。まあいいか。現職警官と未成年で朝まで呑むのも悪くない。

○月○日
結局二日酔いで、連泊することにした。外が雨だったせいもある。高校時代、バイト先の先輩が、有楽町のガード下で呑み方を鍛えてくれたことに感謝した。
じゃなけりゃ、今頃ぶっ倒れている。午後、宿の女主人に指摘を受ける。
”君は大人の中で暮らしてきたのではないか。だから、若者らしさに欠ける。遠慮深すぎる。臆病すぎる。甘えすぎる。今のままじゃ、君の旅は、君を傷つけるだろう”
大きなお世話だ。けど、自分でも感じていたことなので、つい質問してしまった。
”どうすれば直りますか”
呆れた顔で云われた答えは、コレも予想していた通りの答えだった。小気味いいくらいに。
”君がそれを見つけるのは、君の旅の中ででしょ。”
雨も上がりそうだし、明日は朝早く出発しよう。

「ゆきの小舎」は、若干場所を移動して現在も営業を続けています。HPもありますから、雰囲気は伝わると思いますよ。元来、コンピューターを嫌いな人達が作ったページなので、ほとんど更新していません。又、実際に宿まで行けば、18歳の私の写真を見ることも可能と思われます。機会があったら立ち寄って見て下さい。でも、20年も前のだから、もう残っていないかもしれませんね。

私はこのメールの返事に旅を終えて自分のどこをどう直せばいいのか答えは見つかりましたか?と書きました。
彼の返事は
いったい、弱点や短所は、直せるものでしょうか。
実は「短所は直せる」と考えていた”俺が、旅の中で「短所と向かい合える」自立した”大人に成長していく過程を日記に盛り込んで行く予定だったのです。自分では、成長できたと思っていました。○○さんの素直な質問で、成長できたと考えるのが、如何に傲慢な考え方か気付かされました。成長に終りはないようですね。はい。今なお発展途上人です。

私はとんでもないない質問を彼にしてしまっていたようです。
彼は私のこの質問にかなり困ってしまったようでした。
私からすれば彼は真っ直ぐ前を見て、突き進んで行く人だと思っていたからです。
そして、旅を終えて自分なりにその答えを見つけたんだろうと勝手に思い込んでいました。
人は死ぬまで勉強で、完璧にはなれないものではないのでしょうか。
でも、前に進むこと。昨日より今日、今日より明日と少しずつでも成長していくものなのではないでしょうか。
完璧になれたら、そこで終わってしまいそう。。
そして、この時、彼の弱さを見つけてしまったような気がしました。

by chocora522 | 2004-11-23 16:35 | 日本一周の旅


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